はじめに
築50年を超える実家を「減築」し、ライフスタイルに合わせてリノベーションを行っています。今回は、襖(ふすま)だった場所に窓と壁(石膏ボード)を新設した部屋をDIY。
古い「繊維壁」と新しい「石膏ボード」が混在している状態から、すべてを真っ白な**漆喰(しっくい)**で統一することにしました。実際にやってみて分かった手順、塗りやすい配合、そしていくつかの失敗談をシェアします。
メモ:繊維壁(綿壁)とは? 紙や化学繊維を糊で混ぜて固めた壁材。昭和の住宅によく使われていますが、経年でボロボロ落ちてくるのが難点です。
使用した道具と材料
🛠️ 工具・道具
- コテ・こて板:漆喰を塗るための基本道具。
- ハンドミキサー:漆喰を攪拌するために必須。手混ぜは重労働なのであると便利。
- 噴霧器:古い繊維壁を剥がす際に水を撒く用。
- スクレーパー:ふやけた繊維壁を剥がすヘラ。
- バケツ:材料を混ぜる用。
- ローラー刷毛:アク止め材(シーラー)の塗布用。
- 目地刷毛:柱などの細かい部分の掃除や処理用。
- ゴムベラ:バケツに残った漆喰を無駄なく集める用。
- 脚立:高いところの作業に。
マキタ(Makita) カクハン機(ミキサー)
手で混ぜるのは本当に大変です。広範囲を塗るならレンタルするか、安価なものでもいいので電動ミキサーの購入を強くおすすめします。
材料
- 漆喰:「大和しっくい」を使用。
- アンダーコート:畑中産業「大和しっくいシリーズ」
- アク止め材:フジワラ化学「アクドメール」。
- 下地調整材:アンダーコート、Hiメトローズ(保水剤)。
- 副資材:メッシュテープ(クラック防止)、マスキングテープ、マスカー(養生用)。
大和しっくい(20kg)
今回使用した本漆喰。自然素材100%で呼吸する壁になります。コスパも良いです。
アク止め材(4kg)
古い壁のDIYには必須。これを塗らないと後でシミだらけになって泣くことになります。ドライアウト防止にも。
DIY漆喰塗りの全手順
新設した壁(石膏ボード)の下処理です。ビス(ねじ)の穴と、ボード同士の継ぎ目(ジョイント部)を木部用パテで2回埋め、その上からメッシュテープを貼って補強しました。これでひび割れを防ぎます。
※パテは、畑中産業の「大和しっくいシリーズ」アンダーコートを買っていたのでそれを固練りして使用するのがベストですが、興味本位で余っていた木部パテを使用してみましたが、結果は良好でした。


ここが一番の重労働ですが、気持ちいい作業でもあります。
- 床や窓枠をビニールシートやマスカーで厳重に養生します(剥がした壁材が大量に落ちます)。
- 噴霧器で壁全体に水をたっぷりかけ、水分を浸透させます。
- スクレーパーを入れると、驚くほど楽に剥がせます。


繊維壁を剥がすと、下地の「砂壁」が出てきます。 柱や窓枠をマスキングテープで養生し、砂壁の欠損している部分や亀裂に「メッシュテープ」を貼り、その上から固練りした「アンダーコート」で平滑に補修しました。


古い壁のリフォームで最も重要なのが「アク止め」です。今回は「アクドメール」をローラー刷毛で塗布しました。 この工程には2つの重要な役割があります。
- アク・シミ防止:下地から汚れが浮き出てくるのを防ぐ。
- ドライアウト防止:土壁が漆喰の水分を急激に吸い込み、硬化不良(割れ・剥がれ)が起きるのを防ぐ。 ※夏場は要注意、塗って2日ほどで起こることもあるようです。
新品の石膏ボードにはシーラー不要ですが、今回念のため塗布しました。

いよいよ漆喰作りです。バケツに材料を入れ、ミキサーで攪拌します。 ★ポイント 混ぜた後、ラップで蓋をして1日寝かせました。これだけでダマがなくなり、滑らかさが格段にアップします。
私の「塗りやすかった」配合レシピ(7月に作業しました)
- 漆喰:12kg
- 水:10リットル
- hiメトローズ:1袋(45g)
hiメトローズ
漆喰に粘り気を出して塗りやすくする魔法の粉。初心者はこれを入れると作業効率が段違いです。




漆喰は一面づつ乾く前に2回塗り重ねました(追っかけ塗り)。 プロのように平らにするのは難しいので、あえてコテの跡を残す「鏝波(こてなみ)仕上げ」に。これなら多少の凹凸も「味」になり、素人でも綺麗に仕上がりました。
コテ、盛板
道具を持っていない方は、まずはこの2つから。鏝はプロ仕様じゃなくても手や砂骨ローラーでもいい感じに塗れます。私は半焼き鏝が調子良かったです。



完成!

【失敗談】これからやる人へのアドバイス
失敗①:隠れていた古釘からの「錆(サビ)」
下地に釘の頭が残っていた場所の窪みを、そのままアンダーコートで埋めてしまいました。すると、漆喰を塗った後に錆色が浮き出てきてしまいました…。
- 原因:穴の奥に、昔額縁を吊るしていた折れた釘が残っていたこと。
- 教訓:金属部分は必ず錆止めを塗るか、完全に取り除く必要があります。


失敗②:頑固な「タバコのヤニ」
今回の部屋とは別の部屋(祖父の喫煙部屋)での出来事です。下地の砂壁が硬く剥がせなかったため、そのままアクドメール+漆喰で仕上げたところ、黄色いヤニが染み出してきました。
- 教訓:タバコのヤニは強力です。アク止め材を塗った後、さらに**「アンダーコート」を全面に塗って縁を切る**工程を入れるべきでした。

まとめ
築50年の家でも、適切な下地処理を行えば漆喰の美しい白壁によみがえらせることができました。特に「一晩寝かせる」ひと手間と、アク止め処理は仕上がりを左右します。ぜひ参考にしてみてください。


