1.はじめに:内装3段変速の調整が必要なサイン
シティサイクルや電動アシスト自転車に多く採用されている内装3段変速ギヤは、外装変速機に比べてメンテナンスの手間が少ないのが特長です。しかし、長期間の使用や経年によるワイヤーの伸び、ケーブルの固着などにより、変速の調子が悪くなることがあります。
調子が悪いと感じる主なサインは以下の通りです。
•ギヤ飛び(歯飛び): ペダルを漕いだ際に「ガリッ」と音がして、一瞬空回りするような感覚がある。
•変速がスムーズにできない: シフトレバーを操作しても、すぐに変速が切り替わらない、または切り替わらない段がある。
•異音の発生: 変速時や走行中に、ハブ付近から不自然な音が聞こえる。
これらの症状は、プッシュロッドの位置がずれていることが原因である場合がほとんどです。専門的な知識が必要そうに思えますが、実は内装3段変速ギヤの調整は、正しい手順さえ知っていればご自身で簡単に行うことができます。不調を感じたら、自転車店に持ち込む前に、まずはこの調整を試してみることを強くお勧めします。
【電動アシスト自転車について】
ユーザー様の自転車がPanasonic製の電動アシスト自転車であるように、多くの電動アシスト自転車も内装3段変速機を採用しています。変速機の調整作業自体は、電動アシスト機能とは独立しており、一般的な非電動の自転車と全く同じ手順で実施できますのでご安心ください。
2. 準備するもの:必要な工具とパーツの確認
内装3段変速ギヤの調整に必要な工具は非常にシンプルです。
| 工具名 | 用途 | 備考 |
| プラスドライバー No.2 | 後輪変速機カバーの取り外し・取り付け | 一般的な家庭用工具で対応可能 |
| 10mmスパナ | ケーブル調整ボルトの固定ナットの緩め・締め付け | モンキーレンチでも代用可能 |

専門用語の解説:シマノNEXUS SL-3S43J
ご提示いただいた記事にあるシマノ製 NEXUS SL-3S43J レボシフターは、内装変速機において非常にポピュラーなモデルです。
•レボシフター: グリップを回転させて変速操作を行うタイプのシフトレバーです。
•ベルクランク: 後輪ハブに取り付けられている部品で、シフトワイヤーの動きをプッシュロッドの動きに変換する役割を担います。
•プッシュロッド: ベルクランクによって押し引きされ、ハブ内部の変速機構を直接操作する細い棒状の部品です。このプッシュロッドの先端位置が、変速の正確性を決定します。
3. 実践:内装3段変速ギヤの調整手順(5ステップ)
ここからは、具体的な調整手順を解説します。作業は安全な場所で行い、自転車が倒れないように安定させてください。
STEP 1:シフトレバーを「2」にセットします
まず、シフトレバー(レボシフター)を「2速」の位置に合わせます。
内装3段変速機の調整は、この「2速」の状態を基準として行います。2速は、ワイヤーが最もニュートラルな状態にあり、プッシュロッドの調整ラインが最も正確に現れる位置だからです。

STEP 2:後輪変速機カバーを外す
プラスドライバーNo.2を使用して、後輪ハブに取り付けられているベルクランクを覆うプラスチック製のカバーを外します。
カバーを外すと、ベルクランク本体と、そこからハブ軸内部に入り込んでいるプッシュロッドの先端が見えるようになります。

STEP 3:ケーブル調整ボルトの固定ナットを緩める
ベルクランクの根元にあるケーブル調整ボルトを固定している10mmのナットを、スパナを使って緩めます。
このナットを緩めることで、ケーブル調整ボルトを自由に回せるようになり、ワイヤーの張りを調整できるようになります。ナットは完全に外す必要はなく、ボルトが手で回せる程度に緩めれば十分です。

STEP 4:ケーブル調整ボルトを回して、プッシュロッドの調整ラインとハブ軸の端面が一致するように合わせます
ここが調整の最も重要な工程です。
1.調整ボルトを回す: ケーブル調整ボルトを指でねじ込んだり、緩めたりして回します。
2.プッシュロッドの動きを確認: ボルトを回すと、ワイヤーが張ったり緩んだりし、それに連動してプッシュロッドがハブ軸内部に押し込まれたり、引き出されたりするのが確認できます。
3.調整ラインを合わせる: プッシュロッドの先端付近には、多くの場合、赤い線(調整ライン)が刻印されています。この赤い線が、ハブ軸の端面と完全に一致するように調整ボルトを微調整します。
この調整ラインがハブ軸の端面と一致した状態が、2速におけるプッシュロッドの正しい位置であり、すべての変速段で正確な変速が行われるための基準点となります。

STEP 5:固定ナットを締めてカバーを取り付けて調整完了
調整ラインが一致したら、以下の手順で作業を完了させます。
1.固定ナットを締める: STEP 3で緩めた10mmの固定ナットを、スパナでしっかりと締めます。この際、調整ボルトが動いて調整ラインがずれないように注意深く作業してください。
2.動作確認: 実際にシフトレバーを1速、2速、3速と操作し、変速がスムーズに行われるかを確認します。可能であれば、後輪を浮かせてペダルを回しながら変速テストを行うとより確実です。
3.走行テストと仕上げ: 実際に走行しながら変速を行い、ギヤ飛びや異音がないかを確認します。問題がなければ、STEP 2で外した後輪変速機カバーをプラスドライバーで元通りに取り付けて、調整完了です。
4. 調整しても直らない場合のチェックポイント
上記の手順で調整を試みても変速の不調が改善しない場合は、プッシュロッドの位置ずれ以外の原因が考えられます。以下の点をチェックしてみてください。
| チェックポイント | 考えられる原因と対処法 |
|---|---|
| 変速ケーブルの固着・錆 | ワイヤーが錆びてアウターケーブル内でスムーズに動かなくなっている可能性があります。特に屋外保管の自転車で起こりやすい症状です。ケーブル全体を交換する必要があります。 |
| プッシュロッドの曲がり・損傷 | プッシュロッド自体が曲がっていたり、先端が摩耗していると、正確な位置に収まりません。プッシュロッドをハブから抜き取り、異常がないか確認し、必要であれば交換します。 |
| ハブナットの緩み | 後輪を固定している左右のハブナットが緩んでいると、ハブ軸全体が動き、変速位置が不安定になることがあります。しっかりと増し締めを行ってください。 |
| ベルクランクの破損 | ベルクランクのプラスチック部分に亀裂が入ったり、ワイヤーのタイコ(先端の金具)を引っ掛ける部分が破損していると、ワイヤーの張力が正しく伝わりません。ベルクランク一式を交換する必要があります。 |
これらの部品交換や、ハブ内部の分解が必要な場合は、無理せず自転車専門店に相談することをお勧めします。
5. メンテナンスにおすすめのアイテム
内装変速機の調整やメンテナンスに役立つアイテムをご紹介します。
•[シマノ (SHIMANO) リペアパーツ プッシュロッド 81.85mm / 86.85mm]: 調整しても直らない場合、プッシュロッドの曲がりや摩耗が原因かもしれません。ご自身の自転車の軸長に合わせたサイズを選びましょう。一般的なチェーン自転車の多くは81.85mm、ベルト自転車の多くが86.85mmです。
•[シマノ 内装3段変速ワイヤー(両頭タイプ)]: 変速が重い、または動かない場合はワイヤーの交換が必要です。内装3段専用のワイヤーを選べば、初心者でも交換作業がスムーズです。
•[トネ(TONE) コンビネーションレンチ 10mm]: ケーブル調整ボルトの固定ナットを回すのに最適な、精度の高い日本製のレンチです。1本持っておくとメンテナンスの質が上がります。
•[AZ(エーゼット) 自転車用 メンテナンススタンド]: 後輪を浮かせて作業できるスタンドがあれば、ペダルを回しながら変速の確認ができるため、調整の精度が格段に向上します。
6. まとめ
自転車の内装3段変速ギヤの調整は、特別な技術や高価な工具を必要とせず、ご自身でできる非常に実用的なメンテナンスです。経年によるワイヤーの伸びは避けられませんが、定期的な調整を行うことで、自転車の快適な走行性能を長く維持することができます。
この手順を参考に、ぜひご自宅でのメンテナンスに挑戦してみてください。
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