【YAMAHA HPH-MT8】ヘッドホンのドライバーユニットを分解してガリガリノイズを探る

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YAMAHA HPH-MT8ヘッドホンのドライバーユニットを分解アイキャッチ
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運命のジャンク品との出会い

メルカリで見つけた「ジャンク・8000円」のYAMAHA HPH-MT8。 プロ御用達のモニターヘッドホン、ずっと欲しかった一台。 「大音量入力で右だけガリガリノイズが出るらしいけど…自分の修理スキルでなんとかなるはず!」と飛びついたのが、すべてのはじまりだった。

到着後、すぐにテスト。 小音量ではほぼ気にならないのに、ボリュームを上げると右耳から不快なガリガリ音が襲ってくる。 ケーブル直結しても、テスターで導通チェックしても改善なし → 右ドライバーユニットの故障確定

「ボイスコイルがマグネットに接触してるかも…分解して直せないか?」 そんな淡い期待を抱き、ドライバーユニットを徹底分解することに。 繊細すぎる作業の末に待っていたのは、予想外の挫折と、ヤマハの設計の深さだった…。

※ドライバーユニット分解前にテスターによる各部導通テスト及び、ヘッドホンケーブルと右ドライバーユニット端子板を直接結線しても症状が改善しなかったことから右ドライバーユニットの故障は確定しております。

ドライバーユニットとは

ドライバーユニット分解図

ドライバーユニットとは、ヘッドホンやスピーカーなどの音響機器で、電気信号を音波に変換する部分です。一般的には、磁気回路と振動板と音響ダクトから構成されています。磁気回路は、電気信号に応じて磁力を発生させるコイルと、その磁力に反応する永久磁石からなります。振動板は、磁気回路に取り付けられた薄い膜や円錐形の部品で、磁力によって振動します。音響ダクト(フレーム+音響レジスター)は、振動板から出た音波を伝える空気の通路です。

  • 磁気回路:コイル+ネオジムマグネット
    コイルは、ボビンに細い銅線が巻かれたもので中心に穴が開いている。
    ネオジムマグネットは、コイルの穴に入っておりリング状になっている。
    ポールとネオジムマグネットは強力に接着されている。
  • 振動板:フィルム膜
    フィルム振動板は、コイルの上に乗っておりコイルボビンと接着されています。またフィルム振動板はセンターキャップと一体になっている。
  • 音響ダクト:フレーム+音響レジスタ
    音響ダクトは、ドライバユニット内の通気抵抗を最適化してフィルム振動板をコントロールし、主に低音を調整していると考えられる。

HPH-MT8の音響ダクトは、音響レジスターを通したフレームの無数の穴と、音響レジスターにある1つの穴だ。

大音量で過電流が流れると、コイルが熱で変形したり接触不良を起こしたり…ガリガリノイズの典型的原因だ。

注意!:ドライバーユニットの分解は、非常に繊細な作業です。分解することでドライバーユニットの構造や原理を理解できますが、分解した後に元に戻すことは難しいです。また、分解することでドライバーユニットの性能や音質が低下する可能性もあります。分解する前には、必ず自己責任であることを認識してください。

YAMAHA HPH-MT8 ドライバーユニット 分解 内部構造

YAMAHA HPH-MT8ヘッドホンハウジングの分解からドライバーユニット取り外しまでの詳しい手順は、
こちらの記事「ドライバーユニットの交換方法」で写真たっぷり解説しています!
(イヤーパッド外し → ハウジングネジ外し → カバー外し → 配線はんだ外し → 接着剥がし…の全工程)

フィルム振動板をフレームから剥がす

フィルム振動板をフレームから剥がした様子(マイナスドライバーとピンセット使用)

フィルム振動板はフレームに接着されているので、マイナスドライバーとピンセットで丁寧に外す。フィルム振動板をフレームから外す際、ボイスコイルが短く切れる…。ここまで来て後戻りできない。

ボイスコイルが巻かれているボビンはフィルム振動板に接着されている。

ボイスコイルの確認

ボビンに巻かれたボイスコイル側面マイクロスコープ
ボビンに巻かれたボイスコイルCCAW(銅被ふくアルミ線)
ボビンにボイスコイルが2重巻きされているのがわかるマイクロスコープ
ボイスコイルがボビンに2重に巻かれている
分解後のフィルム振動板マイクロスコープ
フィルム振動板
マイクロスコープにてフィルム振動板のセンター付近
フィルム振動板センター付近
ボイスコイル(写真左)と0.3mmの銅線(写真右)との比較
ボイスコイル(写真左)と0.3mmの銅線(写真右)との比較
マイクロスコープによるボイスコイル(写真左)と0.3mmの銅線(写真右)との比較
マイクロスコープによるボイスコイル(写真左)と0.3mmの銅線(写真右)との比較
  • CCAWボイスコイルがボビンに二重巻き
  • 強力ネオジムマグネット+ポールで精密な磁場
  • 音響ダクト(フレームの無数の穴+レジスター)で低音を緻密にコントロール

マイクロスコープでボイスコイルを凝視…外傷なし。 でもノイズの正体は?

  • 二重巻き内部で被覆剥がれ→大音量で短絡寸前?
  • 微妙な干渉?

外から見えないなら、再組み立てして確認するしかない

ドライバーユニット再組み立て:最後の望みをかけて

STEP 1:ボイスコイルを端子板に繋ぐ長さを確保する

振動板にボイスコイルを固定している接着剤を剥がす前
接着剤剥がす前
振動板のボイスコイル固定接着剤を溶剤で溶かす作業
接着剤を溶剤で溶かす

ドライバーユニット分解の際、短くなったボイスコイルは、フィルム振動板に接着されているボイスコイル部分を溶剤で溶かし、コイルをフリーにして長さ確保。

STEP 2:フィルム振動板をフレームに接着する

フィルム振動板をGクリヤー(接着剤)で再接着

フィルム振動板をGクリヤーで再接着

STEP 3:ボイスコイルボビン芯出し(超重要!)

フィルム振動板をフレームに貼り付けた直後、ここが一番の山場です。 接着剤が乾く前に、ボイスコイルが磁気回路の中心でぴったり均等に浮いているか(=芯が出ているか)を確認しないと、組み上がった後に「ガリガリ」や「音割れ」が再発する原因になります。

ポールとギャップって何?

  • ポール:ボイスコイルボビンが振動するための隙間(磁場)を作る中心の部品。
  • ギャップ:ヨークとポールの間の狭い空間。ここにボイスコイルが均等に入っていないと、振動が偏ってノイズの元に…。

やり方はシンプルだけど繊細!

  • 接着剤が完全に乾く前に、マイクロスコープでボイスコイルの位置をぐるっと一周チェック。
  • ギャップ(隙間)が全周で均等か? どこかで狭くなったり広くなったりしてないか?

コツ:フィルム振動板をフレームの糊しろ(接着面)に偏りなく均等に貼るだけで、ほとんどの場合、自然と芯が出ます。 分解して内部構造を把握したおかげで、貼った後でも「ここがちょっとズレてるな」と感覚がつかめるようになりました。 (最初はドキドキでしたが、何度も見てるうちに目が慣れてきます!)

ボイスコイルボビン芯出し作業後の図(ギャップ均等確認・フィルム振動板をフレームに貼った後)
フィルム振動板をフレームに貼った後の図

STEP 4:ボイスコイルの銅被ふくを剥く(慎重に!)

芯出しが終わったら、いよいよはんだ付けの準備。 ボイスコイルの線はエナメル被覆(銅被ふくアルミ線:CCAW)で覆われているので、そのままではんだが乗らないんです。 ここで熱を使って被覆を剥きますが、センターキャップ(振動板の中央部分)を潰さないよう絶対注意

やり方:

  1. ドライバーユニットのプロテクター(キャップ)を元に戻して装着。 → これでセンターキャップに直接力が加わらず、安全に守れます。
  2. はんだごてを予備はんだで濡らしておく。
  3. ボイスコイルの線を軽く擦るように熱を当てる → 熱で被覆が溶けて剥がれ、銅線が露出!

コツ:

  • 温度は低め(300℃前後)で短時間。長く当てすぎると線が切れたり、振動板が熱で変形する恐れあり。
  • 擦る動作で熱が均等に伝わるので、意外とスムーズに剥けます。

これで線がキレイに露出したら、極性確認(前述の手順)をして、端子板に正しくはんだ付けへGO!

プロテクター装着状態でボイスコイルのエナメル被覆を剥く作業(センターキャップ保護)
定電圧電源でボイスコイルの極性(プラス・マイナス)を確認(振動板の動き観察)

はんだ付け前に絶対やっておきたいのが、ボイスコイルの極性チェックです。 線が細すぎて色分けがない場合、どっちがプラスかマイナスかわからなくなりますよね…。 そんな時は、簡単な方法で振動板の動きを見て判別できます!

必要なもの

  • 定電圧電源(1V程度、電流制限0.1AくらいでOK)
  • なければ乾電池1.5V(単三や単四で十分!)

やり方

  1. ボイスコイルの2本の線のうち、どちらかを定電圧電源のプラス側に、もう片方をマイナス側に仮接続します(どちらから始めても大丈夫)。
  2. 電源をONにして電流を流す(実際の測定では0.02Aくらいしか流れませんでした)。
  3. フィルム振動板(ダイアフラム)の動きを観察!
  • 振動板が上に膨らむ(外側に押し出される) → 今プラス側に繋いでいる線がボイスコイルのプラスです。
  • 振動板が下にへこむ(内側に引っ張られる) → 今プラス側に繋いでいる線がボイスコイルのマイナスです。

この方法は大きなスピーカーのボイスコイルでも全く同じです。 実際にやってみると、1Vの微弱な電流でも振動板がしっかり動くので、意外とわかりやすいですよ!

注意点

  • 電圧は低め(1V前後)に。高いと振動板が破損する恐れがあります。
  • 接続は一瞬だけ。長時間通電しないように。
  • 極性が逆だと左右の音が逆相になって定位が狂うので、ここで間違えないよう慎重に!

これで極性が確定したら、端子板に正しくはんだ付けして次のステップへ。 (ここで間違えると、後で「なんか音がおかしい…」と頭を抱えるハメになるので、念のためもう一度確認を!)

STEP 6:ドライバーユニット端子板にはんだ付け

ボイスコイルの細い線を爪楊枝で癖づけ(はんだ付け準備)
①ボイスコイルの細い線を爪楊枝で癖づけ
ドライバーユニット端子板に4本はんだ付け完了
②ドライバーユニット端子板に4本はんだ付け

組み上がった!音楽再生… 結果:変わらずガリガリ。 小音量ではマシだけど、大音量でノイズが爆発。完全に聞けないレベル。

敗北の瞬間、そして次への決意

「分解しても直せなかった…」 ボイスコイルの微細な損傷は、目視では捉えきれなかったらしい。 ここで悟った。

ヤマハ HPH-MT8の純正ドライバーは、並大抵のものじゃない。 フラットで高解像度、疲れにくい装着感…プロが選ぶ理由が、分解して初めて実感できた。

結局、AliExpressで交換用44mmドライバーを注文

次回は「純正 vs 交換品」のガチンコ聴き比べをお届けします。 純正の感動を失いたくなかったけど…修理代考えると、新品買い直しもアリかも?

AMAHA HPH-MT8分解で純正の凄さを痛感…本気でこの音が欲しい人は新品を!

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修理外の参考写真

HPH-MT8ドライバーユニット実測45mm
HPH-MT8の左ハウジング内ヘッドホンジャック端子板
左ハウジング内ヘッドホンジャック端子板

HPH-MT8への本音

MDR-CD900STのような古い業務用とは違い、現代的で正確。 でもリスニング向きに少し低音を足したくなる…。

だからこそ、交換後もチューンして楽しむつもりです!

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