YAMAHAモニターヘッドホンHPH-MT8が大音量(過電流)を入力したからだと思うのですが右だけガリガリノイズが出るようになったけど修理できるかな?
ヘッドホンのガリガリノイズの原因としてドライバーユニット内部のボイスコイルがマグネットなどに接触している可能性があるので分解して再組み立てした模様を紹介します。
※ドライバーユニット分解前にテスターによる各部導通テスト及び、ヘッドホンケーブルと右ドライバーユニット端子板を直接結線しても症状が改善しなかったことから右ドライバーユニットの故障は確定しております。
今回は、ヤマハヘッドホンHPH-MT8のドライバーユニットを分解して、小さな音量の時にはほとんど聞こえないのですが音量を上げるほどガリガリという不快なノイズが大きくなる原因をドライバーユニットを分解して調べドライバーユニットを交換しない修理を試みようと奮闘しました。
この記事では、ドライバーユニットの構造と分解方法について詳しく解説します。
またノイズの発生原理についても少し考えてみました。
ドライバーユニットとは
ドライバーユニットとは、ヘッドホンやスピーカーなどの音響機器で、電気信号を音波に変換する部分です。一般的には、磁気回路と振動板とフレームから構成されています。磁気回路は、電気信号に応じて磁力を発生させるコイルと、その磁力に反応する永久磁石からなります。振動板は、磁気回路に取り付けられた薄い膜や円錐形の部品で、磁力によって振動します。フレームは、振動板から出た音波を伝える空気の通路です。
ドライバーユニットの分解方法
ドライバーユニットを分解するには、まずヘッドホンの耳当て部分を外します。
イヤーパッドの側面を指で強く引っ張って外しました。
ハウジングは、プラスチックでできた枠で、ドライバーユニットを固定する役割があります。
ドライバーユニット側のハウジングは、ねじ4本でもう片方のハウジングに固定されています。
ドライバーユニットカバーはネジ3本で固定されています。
ドライバーカバーをズラすとドライバーユニットが見えます。
この段階でドライバーユニットカバーは、ドライバーユニット端子板にはんだされている配線を外さないと完全に外せませんが、スポンジ吸音材は切り込みが入っているので外すことができます。
左の入力端子からヘッドバンドを経て左のドライバーユニットの端子板に来ている2本の線とボイスコイルの極細の2本線がはんだ付けされています。
ボイスコイルの極細線はドライバーユニットのフレームにも白く固い接着材のようなもので固定されています。
白い接着剤を取り除く際、ボイスコイルを切ってしまいました。
溶剤で接着材を溶かして外せばコイルが切れなかったかもしれません。
※端子板のボイスコイル接続パターンに0.3mmの銅線がはんだされているのは気にしないでください。コイル線とはんだ接続可能か実験を行ったためです。
ドライバーユニットはハウジングに接着されています。
接着剤は、カッターや-ドライバーなどで切り離します。注意点としては、ハウジングからドライバユニットを外す際にドライバユニットやハウジングに傷が入ることは諦めて出来るだけ少ない傷で済むように必要な時には力強くこじることです。
マイナスドライバーでこじ開けてハウジング裏面などの盛り上がってしまった部分は後で組み付ける前に大きめのドライバーの丸軸部分で抑えて修正しました。
ドライバーユニットプロテクターも薄く接着剤で固定されているのでマイナスドライバーでこじ開けました。
プロテクターが開く瞬間にマイナスドライバーがフィルム振動板側に滑るのでフィルムに穴をあけないように注意します。
フィルム振動板はフレームに接着されていますので、マイナスドライバーとピンセットで丁寧に外します。
フィルム振動板をフレームから外す際、ここでもボイスコイルが切れ短くなりました。
ボイスコイルが巻かれているボビンはフィルム振動板に接着されています。
ドライバーユニットをここまで分解したので次はドライバーユニットの内部構造を確認していきます。
ドライバユニット内部構造
ドライバーユニットの中身は、磁気回路とコイルと音響ダクトからなります。
磁気回路は、コイルと永久磁石が組み合わされた円形の部品です。
コイルは、ボビンに細い銅線が巻かれたもので中心に穴が開いています。
永久磁石(強磁力ネオジムマグネット)は、コイルの穴に入っておりリング状になっています。
フィルム振動板は、コイルの上に乗っておりコイルボビンと接着されています。またフィルム振動板は薄い膜でセンターキャップと一体になっております。
音響ダクトはドライバユニット内の通気抵抗を最適化してフィルム振動板をコントロールし、主に低音を調整していると考えられます。
HPH-MT8の音響ダクトは、音響レジスターを通したフレームの無数の穴と、音響レジスターにある一か所の穴です。
ポールと強磁力ネオジムマグネットはしっかり接着されており故障は考えにくかったので分解はここまでとしました。
ドライバーユニットの分解は、非常に繊細な作業です。分解することでドライバーユニットの構造や原理を理解できますが、分解した後に元に戻すことは難しいです。また、分解することでドライバーユニットの性能や音質が低下する可能性もあります。分解する前には、必ず自己責任であることを認識してください。
ボイスコイルの確認
大音量(過電流)の入力が原因と思われる右だけのガリガリノイズは、ドライバーユニット内部のボイスコイルを観察すれば修理可能かもしれないと思いマイクロスコープでボイスコイル、ボビン、フィルム振動板を観察しました。
ところが外傷は見当たりませんでした。
だとするとノイズの発生原理は
- 観察できない二重巻きのコイル内で銅被ふくが剥がれかかっていて音量を大きくしてたくさん電流が流れるほど短絡寸前になっているのか?
- 外傷がないだけで ボイスコイルがどこかに干渉しているのか?
確認できるとしたらボイスコイルを干渉しないようにドライバーユニットを再組み立てすることしか思い浮かばないので組み立て直して確認することにしました。
ドライバーユニット組み立て
ドライバーユニット分解の際、切って短くなったボイスコイルですが、
フィルム振動板に接着剤で固定されているボイスコイル部分を溶剤で溶かしてフリーにすることでボイスコイルを端子板に繋ぐことができる長さを確保しました。
接着面を溶剤で清掃後、Gクリヤーで接着しました。
ポールとは、ヨークとポールの隙間にギャップという、ボイスコイル ボビンが振動する為の隙間(磁場)を作るための部品です。
フィルム振動板の接着剤が乾く前にマイクロスコープでボイスコイルのギャップが均等であることを確認しました。
フィルム振動板をフレーム糊しろに偏らずに接着すればボイスコイルのギャップも自然と均等になります。
ドライバーユニットを分解して内部構造を把握したのでフィルム振動板を貼った後でもボイスコイルのギャップの見当がつくようになりました。
フィルム振動板のセンターキャプを潰さないようにドライバーユニットのキャップを付けてから
予備はんだがてらはんだごてでボイスコイルを擦ると熱でボイスコイルの銅被ふくは剥けました。
ボイスコイル線の極性確認
定電圧電源でボイスコイルから出ている2本の線のどちらがプラスかマイナスかわからない時に確かめる方法です。
定電圧電源がなければ乾電池1.5VでもOKです。
ボイスコイルの2本の線のどちらでもいいので定電圧からのプラス側を接続し、もう片方にマイナスを接続して電流を流してみます。
電流を流した時、フィルム振動板が上に膨らめば定電圧のプラスに繋いでいる方がボイスコイルのプラスです。
反対にフィルム振動板が下にへこんだら定電圧のプラスに繋いでいる方がボイスコイルのマイナスになります。
大きなスピーカーコイルでも同様の方法でプラスマイナス判別できます。
※定電圧電源出力設定は1V0.1A(確認時実際流れていたのは定電圧電源のメーター読みで0.02Aだった)
配線をはんだづけした後、音楽を再生してヘッドユニットから音が出るか確認してみました。
結果は分解前と同様ガリガリノイズが小さい音量ではわからないのですが音量を大きくするとノイズが煩わしくて全く聞いていられないほど出ています。
残念ですが諦めてドライバーユニットを交換することにしました。
交換用のドライバーユニットはアリエキスプレスで45mmドライバーユニットを注文しました。
モニターヘッドホンYAMAHA:HPH-MT8の感想
モニターヘッドホンと言えばMDR-CD900STですが、MDR-CD900STは古い設計の業務用ヘッドホンですので、不自然にカットされたような低音と緩い装着感を持つ業界標準から
現代的な設計の疲れにくい装着感でありながらフラットにすべての音域を正確に再生するHPH-MT8をたくさんのプロも使っていると聞いて興味を惹かれ購入しました。
HPH-MT8購入後は主にamazon musicで音楽リスニングに使用する程度でしたのでHPH-MT8でもモニターヘッドホンの全域フラットで自然な再生は物足りなさを感じました。
個人的には低音を響かせる味付けがあった方が好みですのでモニターヘッドホンの頑丈なつくりと装着感の良よさを活かしつつドライバーユニットをチューンナップして楽しむことにします。
とは言ってもドライバーユニットが修理不能でなければHPH-MT8ドライバーユニットのまま使用するつもりでおりましたので、HPH-MT8本来の全体的に高解像度で明瞭感がある音質を変えるのは大変残念です。
ドライバーユニット交換でメーカー修理に高い修理代を払うより新たにHPH-MT8を購入しても良かったかな