はじめに:中古ボール盤の「芯振れ問題」、交換で解決できます
「せっかく買ったミニボール盤なのに、芯振れが大きくて使い物にならない…」
中古でHDP10Aを購入した際、まさにこの状況に直面しました。しかし、ドリルチャックを高精度なものに交換するだけで、振れは気にならないレベルまで改善します。
今回は、机上での小型工作に最適な10mmキリが使えるミニボール盤を目指し、GLOBE製(旧:堀内製作所)地球印ドリルチャック MG10-JT1に交換した全手順を解説します。
この記事で分かること:
- HDP10Aに適合する10mm対応ドリルチャックの選び方
- ジャコブステーパー(JT1)の基礎知識
- 芯振れ測定方法
- ドリルチャック交換の具体的手順
- ドリルチャックの種類と規格(MG/EL/Eの違い)
HDP10Aに最適なドリルチャックの選定理由
なぜGLOBE MG10-JT1を選んだのか
HDP10Aのテーパーは**JT1(ジャコブステーパー1番)**です。
通常、JT1テーパーの標準ドリルチャックは最大8mmまでしか対応していません。しかし、GLOBE製には「標準外テーパードリルチャック」という製品ラインナップがあり、10mmキリが使えるJT1テーパーという特殊仕様が存在します。
選定した製品:
- 品番: MG10-JT1
- 使用範囲: 0.5〜10mm
- ジャコブステーパー: JT1(特殊仕様)
- 精度: MG(マシングレード)= 芯振れ0.08mm以下
メリット:
- 小型ボール盤でも10mmの大径ドリルが使える
- 高精度MG規格で芯振れを大幅改善
- 日本製の信頼性
交換前の状態確認と振れ測定
旧ドリルチャックの取り外し

通常、ドリルチャックは楔(チャックドリフト)を打ち込んで外しますが、今回の中古品は手で簡単に外れました。これは固着が不十分だった可能性があります。

ジャコブステーパー主軸テーパー部の状態は良好とは言えず、やや心配でした。

樹脂部品は劣化がひどく不要と判断し、取り除きました。



主軸の芯振れ測定【重要】
ドリルチャック交換前に、本体の芯振れがどの程度かを把握することが重要です。
使用測定器: ミツトヨ ダイヤルゲージ


測定結果:
- 主軸の回転振れ: 約0.02mm
- 本体フレームの振れ(ガタ): 約0.03mm(指で押した状態)
- 合計振れ: 約0.05mm
予想より少なく、ドリルチャック交換で改善が見込める数値でした。
GLOBE MG10-JT1の開封と外観比較
高精度ドリルチャックの開封


高級品の開封は、胸が躍る瞬間です。日本製の重厚感が伝わってきます。
旧チャックとの外観比較


新品のMG10-JT1と振れの大きかった旧チャックでは、重厚感と作りの精度が全く違います。
ドリルチャック交換手順
STEP 1:テーパー部の脱脂【重要】
テーパー部に油分や汚れがあると、固着不良や振れの原因になります。


ジャコブステーパー主軸とドリルチャックのテーパー部を、アルコール(IPA推奨)で徹底的に脱脂します。
STEP 2:ドリルチャックの取り付け
取り付け手順(付属取扱説明書に準拠):
- テーパー部に傷をつけないよう、慎重にチャックを差し込む
- チャックの爪が出なくなるまで回転させる
- チャック本体端面を、プラスチックハンマーまたは木ハンマーで打ち込む
- 打撃力の目安: 300g程度を数回(脱落しない程度に固着させる)


⚠️ 注意点:
- 金属ハンマーは厳禁(チャック本体を傷める)
- 打ちすぎると外れなくなる
- ジャコブステーパー主軸の状態が悪くても、適切に打ち込めば脱落しない
交換後の効果と運用上の工夫
芯振れ改善の効果
Before(旧チャック):
- 芯振れが大きく、使い物にならないレベル
- 精度が必要な作業は不可能
After(GLOBE MG10-JT1):
- 芯振れは気にならないレベルまで改善
- 精密な穴あけ作業が可能に
HDP10Aの弱点と対策
問題点: HDP10Aは回転速度調整つまみを最小にしても、回転が速すぎて使いづらいという欠点があります。
現在の対策: コンセントにはんだごて用ヒートコントローラーを接続し、回転数を強制的に下げて使用しています。

今後の改善案: プーリーを改造してプーリー比を変更し、トルクアップ&低速化を図りたいところです。
ドリルチャックの基礎知識【選定ガイド】
ボール盤によって適応するドリルチャックは異なります。以下、選定に必要な基礎知識をまとめます。
ドリルチャックの2つの種類
① ネジ型ドリルチャック
用途: 電気ドリル、エアドリルなど 取付ネジサイズ: 3/8-24UNF または 1/2-20UNF(一般的) 特徴: ネジで固定するため着脱が容易
② テーパー型ドリルチャック
用途: ボール盤、旋盤、フライス盤など 取付方法: 打ち込んで固着させる(面圧で保持) テーパー規格:
- ジャコブステーパー(JT): 日本・米国で主流
- モールステーパー(MT): 欧州で主流
ドリルチャックの精度規格(MG/EL/E)
| 記号 | 正式名称 | 芯振れ精度 | 用途 |
|---|---|---|---|
| MG | マシングレード | 0.08mm以下 | 工作機械用(高精度) |
| EL | エレクトリックドリル | 0.20mm以下 | 電気ドリル用(実際はMG級も多い) |
| E | エレクトリック | 0.20mm以下 | 携帯用電動工具・工作機械 |
選定のポイント: 精度が必要な作業ならMG規格を選ぶべきです。
標準外テーパードリルチャックとは
通常より1〜2ランク小さいテーパーの商品です。
メリット: 小さなテーパーの機械でも、より大きな工具を把握できる
例: 今回使用したMG10-JT1
- 通常のJT1 → 最大8mm
- 標準外JT1 → 最大10mm(本来はJT2サイズ)
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ドリルチャック取り外し工具:チャックドリフト
チャックドリフトは、アーバーやボール盤主軸から簡単にドリルチャックを取り外せる楔状工具です。
使い方: 取り外したい工具と主軸の隙間に楔を打ち込む
選び方: テーパーの直径より大きなサイズを使用
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まとめ:ドリルチャック交換で精度は劇的に向上する
HDP10Aのドリルチャック交換は、中古ボール盤の芯振れ問題を解決する最も効果的な方法です。
交換のポイント:
- 適合チャック: GLOBE MG10-JT1(JT1テーパー・10mm対応)
- 精度規格: MG(マシングレード)を選ぶ
- 取り付け: テーパー部の脱脂が最重要
- 打ち込み: プラスチックハンマーで300g程度を数回
費用対効果: 数千円の投資で、使い物にならなかったボール盤が精密工作に使えるレベルまで改善します。
中古ボール盤を購入して芯振れに悩んでいる方は、ぜひドリルチャック交換を試してみてください!
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よくある質問(FAQ)
Q: ドリルチャックは自分で交換できますか? A: はい。脱脂とハンマー打ち込みだけで交換可能です。特殊な工具は不要。
Q: JT1テーパーで10mm対応のチャックは珍しいですか? A: はい。GLOBEの「標準外テーパードリルチャック」は特殊仕様です。
Q: 芯振れはどれくらい改善しますか? A: 旧チャックの精度にもよりますが、MG規格(0.08mm以下)まで改善が期待できます。
Q: チャックドリフトがない場合、どうやって外しますか? A: 固着が弱ければ手で外れます。固い場合は、木片+ハンマーで軽く叩いて外します。


