【分解】SR43SWを開けてみた|時計用ボタン電池の中身と「電池が終わる」仕組み

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分解された時計用ボタン電池SR43SWの内部構造と部品の並び

腕時計の電池交換をしていると、ふと気になることがあります。

📸SR43SW

RICOH 570A クオーツムーブメントと使用済みボタン電池
maxell 時計用酸化銀電池 SR43SW(1.55V)のパッケージ

「この小さなボタン電池の中には、一体何が入っているんだろう?」

今回分解してみたのは、時計の電池交換でもおなじみのSR43SW。直径約11.6mm、厚さ約4.2mmというごく小さなボタン電池です。

普段なら古い電池を取り出したらそのまま廃棄してしまいますが、今回は電圧がなくなった使用済みの個体をあえて開けて中身を観察してみました。

すると、わずか数ミリの空間から次のようなパーツが次々と現れました。

  • 金属製のケース
  • 黒い粉末状の正極活物質
  • 極薄の金属板
  • フィルム状・不織布状のセパレータ
  • 黒い樹脂製ガスケット
  • 白〜灰色の負極活物質

この記事では、実際の分解写真を見ながら「各部品の役割」と「電池が終わるとは内部で何が起きているのか」を分かりやすく解説します!

※本記事は使用済み電池の内部構造を観察した記録です。メーカーや個体によって仕様・寸法・材質は異なります。

目次

1. SR43SWの構成パーツを並べてみた

まずは、解体して取り出したパーツを順番に並べてみます。

📸分解したSR43SWの全パーツ写真【表と裏】

分解されたボタン電池SR43SWのすべての構成パーツの一覧写真

分解されたボタン電池SR43SWのすべての構成パーツの裏側一覧写真

▲分解作業のため中央にツールを刺して開口したSR43SW。※手作業で解体しているため部品に損傷があります。

外側から見ればただの小さな金属ディスクですが、中にはいくつもの部品が隙間なく積層されていました。プラス極側からマイナス極側へ順番に整理すると以下の通りです。

順序部品名主な役割
1正極缶外装・プラス極側の端子
2正極活物質酸化銀を主体とする電極材料
3集電体電極から効率よく電流を取り出す
4セパレータショートを防ぎ、イオンだけを通過させる(フィルム+不織布)
5ガスケット絶縁・密閉・電解液の漏れ防止
6負極活物質亜鉛を主体とする電極材料
7負極缶外装・マイナス極側の端子

直径1cmにも満たないケースの中に、これだけの精密構造が詰め込まれているのには驚かされます。

2. ケース内部の「黒い粉」の正体は?

分解して最初に目を引くのが、内部に詰まった黒っぽい粉末です。

📸黒い正極活物質

解体された使用済みボタン電池の缶と内部の黒い生成物
使用済み電池の外缶を取り外した様子。内部には黒く乾いた電解液の結晶や分解生成物が固着している。
分解したボタン電池SR43SWの内部にある黒い正極活物質(酸化銀)の拡大写真
黒い正極活物質

▲外缶を取り外した様子。黒く乾いた反応生成物が固着している。

新品の酸化銀電池では、正極側に酸化銀(Ag₂O)が使われています。時計を動かして放電が進むと、正極側では酸化銀が還元されて「銀」へ変化します。

  • 放電時の基本変化:  Ag₂O → Ag

「じゃあ、この黒い粉は純銀なのか?」というと、そう単純ではありません。

電極には導電性を高めるための補助材料なども混ぜ合わされているため、この粉末全体が純粋な銀というわけではありません。正確には「放電反応によって化学変化を起こした、銀を含む正極側の反応生成物」と捉えるのが適切です。

3. 「電池がなくなる」とは何が起きているのか?

普段「電池がなくなった」と言いますが、内部の物質が消えてなくなっているわけではありません。

酸化銀電池の内部では、放電に伴って次のような化学変化が進んでいます。

  • 正極: 酸化銀 → 銀
  • 負極: 亜鉛 → 酸化亜鉛など

つまり、「電池の終わり=中身が消える」のではなく、「電気を取り出せる化学状態から、取り出せない状態へ変わった」ということです。

見た目は新品も使用済みも同じ金属缶ですが、内部では数年間にわたって静かに化学反応が進行していたことが分かります。

4. 謎の薄い金属板「集電体」の働き

次に出てきたのが、こちらの非常に薄い金属シートです。

📸集電体【表と裏】

▲正極側に入っていた薄い金属シート。

この部品の重要な役割は「集電体(しゅうでんたい)」です。

電極活物質(黒い粉末など)が反応して電気を生み出しても、それ単体では効率よく外部へ電流を流せません。そこで、電極と金属ケース(端子)の間に入り、電気をスムーズに集めて橋渡しをするのが集電体の役目です。

  • 化学反応で電気をつくる(活物質)
  • 電気をスムーズに集める(集電体)
  • 外部へ流す(金属ケース/端子)

極小の電池内部でも、電気をロスなく取り出すための動線がしっかり設計されています。

5. 2種類の「セパレータ」が持つ役割

さらに奥へ進むと、透明なフィルムと不織布状のパーツが現れました。

📸透明フィルム【表と裏】

液漏れ電池内部の薄いセパレータフィルムと微粒子
液漏れ電池内部の薄いセパレータフィルム裏面

▲一見すると単なる樹脂フィルムのように見えるセパレータ。

セパレータは、正極と負極が直接触れてショート(短絡)するのを防ぎつつ、電解液を通した「イオンの移動」だけを許可するフィルターです。

なぜ「不織布」が青と白に分かれているのか?

興味深いのが、こちらの不織布セパレータです。

📸不織布セパレータ

不織布セパレータ
不織布セパレータの反対側

▲不織布セパレータ。中央と外周で色がはっきりと分かれている。

中央の「青い部分」と外周の「白い部分」で見た目が異なりますが、これは素材が違うわけではありません。

  1. 中央の青いエリア(発電領域)
    • アルカリ電解液がしっかりと保持されている領域。
    • インジケーター層や透過処理の着色が、電解液を含んで膨潤することで鮮やかな青色として透けて見えています。
  2. 外周の白いエリア(封止圧着領域)
    • 黒い樹脂ガスケットで強烈に押し潰されていたフチの部分。
    • 強い圧着力で電解液が絞り出され、不織布本来の白い繊維が密着した状態になっています。

1枚の薄いシートの中で、「液を保持して発電する場所」と「強圧で液漏れを防ぐ場所」が見事に機能分けされていることが観察できます。

6. 液漏れを防ぐ「黒いガスケット」

ケースのフチにはめ込まれているのが、この黒いリング状パーツです。

📸ガスケット

ボタン電池のパッキン

▲正極と負極を隔てる樹脂製ガスケット。

単なるゴムパッキンに見えますが、極めて重要な役割を持っています。

  • 正極缶と負極缶の絶縁(ショート防止)
  • 強力な密閉による電解液の漏れ防止

このガスケットの精度が低いと、内部の強力なアルカリ電解液が外へ漏れ出し、時計のムーブメントを腐食させてしまいます。地味ながらも電池の信頼性を支える要の部品です。

7. 負極の白っぽい塊(亜鉛ゲル)

マイナス極側からは、白〜灰色っぽい湿った物質が出てきました。

📸負極活物質

分解したボタン電池SR43SWの負極缶からピンセットで負極活物質をマイナスドライバーで剥がしている様子
分解したボタン電池SR43SWの負極缶からピンセットで負極活物質をマイナスドライバーで剥がしている様子
分解したボタン電池SR43SWの内部にある負極活物質のクローズアップ写真
負極活物質

▲負極側に充填されていた亜鉛を主体とする材料。

これが負極活物質(亜鉛)です。

放電時に亜鉛が酸化反応を起こすことで、電子が外部回路(時計側)へと押し出されます。クォーツ時計が1秒ごとにチクタクと針を刻むエネルギーは、この亜鉛の化学反応から生み出されています。

8. 負極キャップの裏側に「銅色」が現れる理由

負極側の金属キャップ(負極缶)を洗浄して観察すると、外側は銀色(ニッケル)ですが、内側から美しい「銅色」が現れました。

📸負極側の金属キャップ【外側と内側】

分解されたボタン電池SR43SWの負極側金属キャップの外観写真
負極側の金属キャップ【外側】
分解されたボタン電池SR43SWの負極側金属キャップの内側写真
負極側の金属キャップ【内側】

▲外側はニッケルメッキ、内側には銅の層が見られる。

実は、ボタン電池のケースは単一の金属ではなく、役割に応じて使い分けられています。

  • マイナス極(負極缶): 外側=ニッケル / 内側=銅
    • 亜鉛との相性が良く、内部での無駄な水素ガス発生を抑えるため。
  • プラス極(正極缶): 外側・内側ともにニッケルメッキ鋼(またはステンレス)
    • 酸化銀や強アルカリ電解液による腐食に耐えるため。

外側からは見えないケースの内側にまで、性能と安全性を高める構造が隠されています。

9. なぜ腕時計には「SR電池(酸化銀)」が使われるのか?

ボタン電池にはLR(アルカリ)やCR(リチウム)などもありますが、アナログクォーツ時計の多くにはSR(酸化銀電池)が指定されています。主な理由は次の3点です。

  1. 電圧が最後まで安定している
    • 放電の終わり際まで約1.55Vの電圧を一定にキープできるため、時計のIC回路やモーターが安定して動作します。
  2. 自己放電が少ない
    • 放っておいても電池が減りにくく、2〜3年の長期運用に向いています。
  3. 「SW」表記の意味
    • 「SR43SW」の「SW」は、主にカレンダーや針を動かす低消費電力のアナログ時計向け(ロードレイン仕様)であることを示しています。

同じサイズ(LR43など)が入るからといって安易に入れると、電圧降下で時計が遅れたり、液漏れリスクが高まるため、指定のSR電池を使うのが原則です。

10. 【危険】ボタン電池の分解は非推奨です

ここまで分解の様子を紹介してきましたが、個人でのボタン電池の分解は大変危険なため絶対におすすめしません。

  • 強アルカリ電解液のリスク: 内部の液が目や皮膚に付着すると化学やけどを引き起こします。
  • ショート・発熱のリスク: 金属工具でプラスとマイナスを短絡させると、急激に発熱・破裂する恐れがあります。

もし作業観察を行う場合は、必ず「保護メガネ」「耐薬品手袋」「換気環境」を整え、万全の安全対策を行った上での自己責任となります。使い終わったボタン電池は分解せず、テープで絶縁して回収箱へ出しましょう。

まとめ|小さな缶に詰まった「化学工場」

普段は何気なく交換して捨てているSR43SWですが、分解してみるとまさに「超小型の化学工場」でした。

  • 直径1cmの中に積層された7層以上の高密度パーツ
  • 密閉と絶縁を両立するガスケット技術
  • 発電エリアとシールエリアを1枚でこなすセパレータ
  • 電解液と反応を制御する異種金属ケース

時計のムーブメント自体も精密機械ですが、それを動かす電池の中にも同じくらい精妙な技術が詰まっています。次に時計の電池を交換するとき、この小さな缶の中で起きている化学変化に少し思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

💡 時計の電池交換・整備におすすめの工具

クォーツ時計の電池交換や内部作業では、金属ピンセットによる電池のショートを防ぐため「非金属ピンセット」が必須です。

  • 絶縁ピンセット(プラスチック・セラミック製): 電池の短絡防止に必須
  • 精密スイス製ピンセット: 微小ネジなどパーツの保持用
  • 裏蓋オープナー / 作業用マット

💡 コイル作業・電池交換の安全対策

金属製のピンセットでのショートやパーツ破損を防ぐため、クォーツ時計の修理には非金属ピンセットが必須です。

💡 おすすめの時計修理アイテム

部品を飛ばしにいく先が細く精密なスイス製ピンセット

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無理なこじ開けはケースに深い傷や変形をもたらします。専用のオープナーや安全な工具選びがDIYの第一歩です。

安全な工具選びと手順で、愛用の時計メンテナンスを楽しみましょう!

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