リコー再編後の独自開発初号機である「オートマット」。
1963年(昭和38年)末頃に発売されたキャリバー1216を、ヤフオクで見つけた完全不動の状態から復活させました。
今回の修理スタイルは、やみくもに全バラしてオーバーホールするのではなく、**「どこが壊れているのかをピンポイントで特定し、最小限の介入で直す」**というピンポイント・アプローチです。現存個体が極めて少ないと言われる幻の1216型が蘇るまでの軌跡を記録します!
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無理なこじ開けはケースに深い傷や変形をもたらします。専用のオープナーや安全な工具選びがDIYの第一歩です。
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📦 今回の修理対象:リコー・オートマット(Cal.1216)のスペック
- 発売開始: 1963年(昭和38年)末頃
- キャリバーナンバー: 1216
- 石数: 21石
- 機械径: φ25.6(11½型)
- 機械厚み: 6.4mm
- 耐震装置: KIF-210 Trior(キフ210トリオール)
- 振動数: 18,000回/時(5振動)
リコー再編後の開発初号シリーズ「1000系」に属する、比較的小振りな「合型」ムーブメントです。自動巻輪列は歯車巻上げ式を踏襲しつつ、構成部品を簡素化した「普及機」らしい合理的で面白い造りが特徴です。
🔍 修理前の状態と診察:異音の正体は?
- 入手状況: ヤフオクで落札した完全不動・ジャンク品。
- 異音の違和感: 時計を振ると、内部から**「カタカタ」**と明確な音がする。
- 初期症状: 裏蓋を開けて観察すると、自動巻ローターの片側をピンセットで軽く押さえるだけで、テンプ取り付けネジに干渉しているのが発覚。さらに、リューズを引いても時刻調整ができない状態でした。
この「カタカタ音」と「干渉」こそが、今回の故障を暴く最大の手がかりでした。
🛠️ 診断とピンポイント修理の全貌
1. テン輪に引っかかっていた「脱落ネジ」の救出
不動の直接原因のひとつがこれでした。機ドメネジが緩んで外れ、なんとテン輪に直撃・引っかかっていたのです。
📸テン輪に引っかかっていた機ドメネジ
機止めネジの本来あるべき位置
- ネジを本来の位置へ確実に締め直し。
- 念のためテンプ全体をベンジンに漬け込んで洗浄。これだけで動き出す下地が整いました。
2. 自動巻ローターのガタつき修正と「歯車巻上げ式」の構造
自動巻ローターに付いているレバーバネを外し、サビを除去して調整を行いました。
📸自動巻ローターに付いているレバーバネ
しかし、根本的な問題はローター軸穴の激しいガタつきです。回転するたびに軸が傾き、テンプ取り付けネジにガリガリと当たって削れ粉を撒き散らしていました(ネジ周りに削れ粉が堆積しているのを発見)。
📸ネジ周りに削れ粉が堆積している
📸 ローターの取り外し工程と注油
- ローター固定板のネジをドライバーで外す
- ローター固定板を取り外す
- ローターを取り外す
- ローター軸に低粘度オイル(AO-2a)を注油
(左右にスワイプして見てね!)
スクロールできます1.ローター固定板のネジをドライバーで外す 2.ローター固定板を取り外す 3.ローターを取り外す 4.ローター軸に軽い油AO-2aを注油
💡 オイル注記:シチズン AO-2a
テンプやガンギ車、四番車のホゾなどCaより粘度が低いオイル。SEIKOのSE-AO-2と同等品です。ポチップ
📸 対策:ポンス台による軸穴の締め調整
ローター軸をポンス台で軽く潰して穴を締め、ガタを徹底的に抑制!
使用したポンス台のタガネ
| 状態 | ガタつき調整前後の変化 |
|---|---|
| Before | ローターをピンセットで押さえるとテンプ固定ネジに干渉する |
| After | ローターを強めに押さえてもネジに干渉しなくなり、振ったときの「カタカタ音」も完全解消 |
Before After
💡 Cal.1216の自動巻機構について
自動巻輪列は伝統的な「歯車巻上げ式」を踏襲していますが、2枚の巻車とレバーバネで極限まで簡素化されています。このレバーバネは、巻車の押圧と、左右のローター回転を爪部分で一方向へ整流する役目を担っており、非常に単純かつ独創的。調整には少し熟練度が要ると言われますが、構造を理解すれば素人の私でもなんとか攻略できました!
3. 折れたカンヌキレバーの交換 & 機ドメの自作
リューズ操作ができなかった原因は、カンヌキレバーの折損でした。ここは手持ちのパーツから良品に交換。これで自動巻きの噛み合いも正常に連動するようになりました。
📸折れたカンヌキ交換
ムーブメント内で根元が折れているカンヌキレバー 先端部分が曲がって段差ができている取り外したカンヌキレバー(竜頭を無理に出し入れしたのが原因?) 新しいカンヌキレバーに交換し裏回り機構が正常に組み合わさった状態
💡 オイル注記:スーパールブリカント オイル #77
巻き芯や裏回り機構の注油には、極圧性の高い「スーパールブリカント オイル #77」を使用。時計専用油AO-3a(SEIKO SE-AO-3同等品)の代用として非常に優秀です。ポチップ
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💡 ちょっとした工夫(機ドメの自作)
ムーブメントの取り扱いは「機止めを外し、風防とベゼルを外して風防側からムーブメントを取り出す」のがリコーお決まりのポイント。
📸ベゼルと風防を取り外しケースからムーブメントを抜き出す前のリコー・オートマットの文字盤
しかし、機止めの一つが破損・欠損していました。そこで、今回お役御免になった壊れたカンヌキの一部に穴を開け、外枠を削り出して自作の機止めに流用! こういう現物合わせのリカバリーが決まるとDIYの醍醐味を感じます。
時計ケースに風防ベゼルを慎重に圧入固定 赤矢印:折れたカンヌキレバーから加工自作した機止め青矢印:純正機止め
👇明工舎 裏蓋閉じ器
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👇裏蓋閉じ器 18個駒セット
使いやすくて安いが、アタッチメントが浅いので風防ガラスが割れたことがあります。
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4. 外装のフルクリーニング
ケース、ベゼル、裏蓋、リューズに至るまで、長年の手垢や黒ずみで汚れていたため、超音波洗浄機で丸洗い。見違えるほどすっきりと清潔な輝きを取り戻しました。
📸ビフォーアフター(ケースクリーニング)
✨ 修理の結果と感想
修理が完了したリコー・オートマット
- ゼンマイを巻くと、テンプの振幅は少し控えめながらも元気に動き出し、振っても異音はゼロ!
- 自動巻き機構も問題なく機能し、実用レベルに復活。
今回は大掛かりなパーツ交換ではなく、**「ローター軸穴の締め直し」と「折れたレバーの交換」、「脱落ネジの復旧」**という非常に地味ながら致命的な2〜3点を潰すピンポイント修理でした。
「近いうちに本格的なオーバーホールが必要」ではありますが、どうしても動かして腕に巻きたかったので、今回はこれで大満足の「一件落着」です!
現存個体が極めて少ないとされるリコーの1216型。また一つ、こうして時を刻む動態保存の仲間が増えたことを心から嬉しく思います。
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