悩んでいる子ねこ「急な下り坂でフロントが沈み込みすぎて、つんのめりそうで怖い…」 「初期動作がもっさりしていて、丸太越えなどのフロントアップが遅れる…」
ねこ先生セロー250で山遊びをする際、純正サスペンションにこんな不満を感じていませんか? その悩み、痛いほどわかります。そこで今回は、純正の弱点を克服し、トレッキングやトライアルごっこで「驚くほど良く動く」フロントサスペンションカスタムをご紹介します。
はじめに:その「怖さ」、あなたのせいじゃありません。
「急な下り坂でフロントがグニャッと沈み込み、前転しそうで怖い……」 「丸太越えでフロントを上げたいのに、反応が一瞬遅れる……」
セロー250は素晴らしいバイクだ。だが、トレッキングやトライアルごっこで深く山へ入ろうとしたとき、純正サスペンションの「柔らかすぎる優しさ」が、時に「恐怖」へと変わる。
安心してほしい。それはあなたの腕が悪いのではない。 純正サスが、そのステージ用にセットアップされていないだけだ。
この記事では、私の愛車(DG17J)で行った、純正の弱点を物理的に克服し、「驚くほど良く動き、かつ踏ん張る」理想の足回りを作る全工程を公開する。
目指すのは、この挙動だ。
- 縮み側: ハードスプリングで奥まで踏ん張り、急坂でもつんのめらない。
- 伸び側: 低粘度オイル&油面調整で、スッと素早く戻る(=フロントアップが軽い)。
- 初期動作: ベアリング追加で摩擦をゼロにし、ヌルっと動く。
1. カスタム車両とライダー情報
- 車両: YAMAHA SEROW250 (2017年式 DG17J)
- ライダー: 体重65kg(装備含まず)
- コンセプト: トレッキング・トライアルごっこ仕様(山遊び特化)
2. フロントサスペンション・カスタムレシピ
ここからは具体的な「魔法の材料(パーツ)」とその「調合理由」を解説する。


① スプリング交換:恐怖心を受け止める「芯」を作る
純正バネは柔らかすぎて、急坂ではすぐに限界(底付き)を迎える。これが「つんのめる恐怖」の正体だ。硬いバネを入れることで、奥での踏ん張りを確保する。
- 使用パーツ:DRC フロントフォークスプリング (D35-01-343)
- 効果: ノーマル比約20%UP。体重65kg前後のライダーに最適解。
- 注意: 青いマーキングを下側にして組み付けること。
【体重別・代替案】
- 体重が軽い方/DRCが硬すぎる場合: TGRオールラウンドレート(約10%UP)
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- ストリート・トライアル特化: TGRストリート・トライアル用(約15%UP)
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② スラストベアリング追加:初期動作をスムーズに
スプリングが縮む時、実はバネ自体が「ねじれ」ながら縮んでいる。このねじれが抵抗となり、動きを渋くする。 ここにベアリングを挟むだけで、その抵抗が消え、高級サスのような「ヌルっ」とした動き出しが手に入る。
- 使用パーツ(左右分):
- IKO 日本トムソン AS1629 スラストワッシャ × 4枚
- IKO 日本トムソン NTB1629 スラストニードルベアリング × 2枚
2年半使用後の検証結果: 3000km走行後メンテナンス時に確認したところ、ワッシャー接触面に摩耗痕があり、しっかり機能していたことが確認できた。「動き出しの良さ」は体感レベルで変わった。


理論:スプリングを押し縮めるとわずかにバネ外径が広がり、同時に巻き方向と逆方向に回る力が発生し、フロントフォークの初期作動を阻害します。フロントフォークの初期動作をスムーズにすることを狙ってスラストベアリングとワッシャーを入れている。
③ イニシャルアジャスター装着:姿勢(車高)をミリ単位で整える
サスペンションの「硬さ」ではなく「高さ(姿勢)」を調整するパーツだ。
- 使用パーツ: ZETA イニシャルアジャスター (ZE56-10524)
- 今回セッティング値:プリロード 14mm(スラストベアリング厚4mm含む)
- 効果: フロント車高を適正化し、旋回性を確保。また、工具なしで内部圧力を逃がせるエアブリーダー機能が、山では地味にありがたい。

プロのセッティング論: 下り坂で前が低すぎて怖いなら、イニシャルをかけて前を上げる。 逆にコーナーで曲がりにくいなら、緩めて前を下げる。 サスセッティングとは、この「バランス取り」のことだ。
イニシャル調整アドバイス
- イニシャル(スプリングにテンション)をかけると車高が高くなります。
(ZETAアジャスター:イニシャル調整可能範囲は-5mmから+10mm) - サスの硬さは、スプリングの「バネレート」でしか変えられません。イニシャル(プリロード)は、そのスプリングを上から押し込んでいるだけなので、サスの初期動作が固くなります。反発は強くなるかもしれませんが、物理的に硬くはなりません、右回しで締め込み、左回しで弱くなります。
- キャスター角が寝ている(チョッパー状態)、曲がりにくい、サスペンションが柔らかい、急制動による沈み込み(ノーズダイブ)を軽減したい➡フロントにイニシャルをかけると改善する。
- コーナーで突っ込みの時に前が低すぎたらフロントにイニシャルをかけて少し高くする。
- 旋回中後ろが低く感じたらリヤにイニシャルをかけます。
- エンデューロレースなどに出られる方、スポーツ走行する方は、前後ハードスプリング、フォークオイル固めにした上で、純正のカラーと差し替えて、イニシャルをかける。
④ フォークオイル設定:粘度と油量で「戻りの速さ」を作る
ここが最大のキモだ。「硬いバネ」を入れた分、オイルは「柔らかく」して、動きを軽くする。さらに油面を下げて「空気のバネ」を大きく使い、奥での粘りを出す。
- 使用オイル:YAMAHA サスペンションオイル G10
- 純正(G15)より粘度を下げ、減衰力を弱める。
- フォークオイル量は、1Lでフロント左右分足ります。
- 油面高さ:145mm(純正125mmから20mm下げ)
- 効果: 油面を下げることで空気層を増やし、初期はスムーズに、奥ではしっかり踏ん張る。伸縮スピードが速くなった。これによりフロントアップのタイミングが格段に取りやすくなり、ノーマルのもっさりした動作は解消される。
フォークオイルの粘度:フォークオイルは#5、#10、#15と数字が大きい方が粘度が高く、粘度が高いほど減衰力(ショックアブソーバー機能)が高まります。 減衰力が強いとフォークが縮みづらく伸びづらくなります。ハードな走りをする場合にはオイル粘度を上げることがあります。
フロントフォークオイルの粘度比較表
| メーカー | 商品名 | 粘度(mm2/s)=(cst) 40℃ |
|---|---|---|
| YAMAHA | フォークオイル G5 | 17.5 |
| フォークオイル G10 | 33.2 | |
| フォークオイル G15 | 47.4 | |
| TGR | フォークオイル5W : TRFO-05 | 14 |
| フォークオイル7.5W : TRFO-75 | 20 | |
| フォークオイル10W: TRFO-10 | 40 | |
| フォークオイル15W: TRFO-15 | 56 | |
| フォークオイル20W: TRFO-20 | 82 | |
| ショックオイルLight: TRSO-01 | 10 | |
| ショックオイルMedium:TRSO-02 | 20 | |
| ショックオイルHeavy:TRSO-03 | 28 | |
| WAKO’S | FK-01 ソフト | 15.4 |
| FK-10 ミディアム | 33.6 | |
| FK-20 ハード | 53.4 | |
| OHLINS | FrontForkFluid No.2.5 | 14.9 |
| FrontForkFluid No.5 | 21.8 | |
| FrontForkFluid No.10 | 38.4 | |
| highperformance R&T43 | 18.2 |
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3. 足回りの総仕上げ:バランスこそ命
フロントだけ良くてもダメだ。バイクは前後で走る。
スイングアームピボットのベアリング化
セローの持病である「スイングアームの渋さ(ブッシュのみの構造)」を、ベアリング化して解消する。
- 使用パーツ: NTN シェル形針状ころ軸受 HK1816LL × 4個
- 使用グリス:FUCHS SILCOLENE PRO RG2(またはWAKO’S ハイマルチグリース)
- 効果: トラクションの向上。路面追従性が向上し、リアタイヤが路面に吸い付く。固着防止にも有効。
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リアサスペンションの調整(サグ出し)
体重に合わせて、リアサスの沈み込み量を適正化する。
- 公式:
0G(浮かせた状態) - 1G(乗車状態) = 60mm(リヤホイールトラベルの1/3)=ザグ
セロー250のリヤホイールトラベル180mm - 結果: 筆者体重65kgの場合、純正位置でほぼ適正値(60mm)が出たため調整なし。
65Kgより軽いライダーはバネが沈まないので、テンションを緩める。65Kgより重いライダーは沈みすぎるので、テンションを強くします。
ザグ出し実際の計算
①写真の様に、バイクをメンテナンススタンドに載せて0Gでアクスルナット~ヘルメットホルダーの鍵穴までを計測(490mm)。次に、スタンドからバイクを降ろして、ライダーが乗車して足を浮かせた状態で同じ個所を計測して上の公式になるようリヤサスを調整します。
490mmー430mm=60mmになっていればOK。
②フロントサスペンションを触ったらリアサスのサグ出し後、フロントフォークの突き出し調整をして、もう一度、リアサスのサグを確認して60mmなら完了。

フロントフォーク突き出し量
- 今回設定値:0mm
- リアサスとのバランスを見て、直進安定性と旋回性のバランスが良い0mmを選択。
- リアサスとのバランスを見て、直進安定性と旋回性のバランスが良い0mmを選択。
フロントフォーク突き出し調整ポイント
- フロントフォークの突き出しは、0~10㎜ 以内で調整する。
- リヤサスが柔らかい(チョッパー状態)とキャスター角が寝て曲がりにくくなるので、フロントフォークを突き出す。最大10mmまで。
- リヤサスが硬いとキャスター角が立ちすぎて直進安定性が損なわれるので、フロントフォーク突き出しは0mmにする。

リヤサス社外品と足回りグリス
今回は、実施しておりませんが、リアはノーマルをリバルビングか社外品に交換するとトレッキングやトライアル(ジャックナイフ、リアホップ)が楽しめます。
※体重や用途による設定が多数用意されているようです。各商品の取り扱い店へお問い合わせください。
OHLINSセロー250用タンク無しS36DR1L (GS1401)
OHLINSセロー250用リザーバータンク付き S36HR1C1L (GS1406)
TGR TEC-1.1 パフォーマンスショック(T111SEROW250)(トライアル専用)
TGR TEC-5.2 パフォーマンスショック(T521SEROW250)(トライアル専用)
FUCHS SILCOLENE PRO RG2 グリス:リチウムコンプレックスグリスです。
ゴムやプラスチック以外のところはどこでも塗れます。例えば、フロントアクスル、リヤアクスル、スイングアームピボット、ステップ軸などに塗るとレーシンググリスなだけあって軽いです。特に体感できるのがステアリングベアリング部に塗るとステアリング操作がすごく軽くなります。また落し蓋の使い勝手が良く安いので今回の作業はもとよりバイクメンテでは重宝しています。
WAKO’S HMG-U ハイマルチグリース :ウレア系グリスです。
今回の足回り作業で使用するならリチウムコンプレックスグリス、リチウムグリス、ウレアグリス、二硫化モリブデングリスが適しています。
ちなみにバイクで使用するグリスのちょう度は2か1が多く、
グリスのちょう度は2より1の方が軟らかくなり低負荷で高速よりのグリスになります。
各種グリスの性能比較表(用途)
| 項目 | リチウムグリス | リチウムコンプレックスグリス | ウレアグリス | 二硫化モリブデングリス(MoS₂) |
|---|---|---|---|---|
| 増ちょう剤 | リチウム石けん | リチウムコンプレックス石けん | ウレア化合物 | 主にリチウム系/Liコンプレックス系 |
| 固体潤滑剤 | なし | なし | なし | 二硫化モリブデン |
| 使用温度範囲(目安) | ~120℃ | ~160~180℃ | ~180~200℃ | ~150~200℃(母体依存) |
| せん断安定性(高温) | △ | ○ | ◎ | ○~◎ |
| せん断安定性(高負荷) | △ | ○~◎ | ◎ | ◎◎(極めて高い) |
| 増ちょう構造の強さ | 弱め | 中~強 | 非常に強い | 母体依存 |
| 耐焼付き性・耐荷重性 | △ | ○ | ○ | ◎◎ |
| 潤滑寿命(グリス切れ) | 短い | 中程度 | 非常に長い | 長い(境界潤滑下で特に有効) |
| グリスの飛散・流動 | 起こりやすい | 起こりにくい | 非常に起こりにくい | 起こりにくい |
| 酸化安定性 | △ | ○ | ◎ | ○(母体依存) |
| 再給脂頻度 | 高い | 中 | 低 | 低 |
| 高速回転適性 | ○ | ○ | ◎ | △ |
| 主な用途例 | 一般軸受 | 高温軸受、建機 | 電動機軸受、長寿命用途 | 建機ピン・ブッシュ、低速高荷重部 |
| コスト | 低 | 中 | 高 | 中~高 |
まとめ:セッティングデータ一覧
今回のトレッキング・トライアル仕様のまとめです。
| 項目 | 設定・パーツ | 備考 |
| スプリング | DRC (D35-01-343) | 20%UPで「踏ん張り」確保 |
| フリクション低減 | IKO スラストベアリング一式 | 初期動作を「ヌルっ」とさせる |
| トップキャップ | ZETA イニシャルアジャスター | |
| プリロード | 14mm | ベアリング厚4mm含む |
| フォークオイル | YAMAHA G10 | 粘度33.2(純正より柔らかく) |
| 油面 | 145mm | 空気バネ重視で奥の粘りアップ |
| 突き出し | 0mm | 安定性重視 |
| リアサグ | 60mm | 体重65kg時 |
このセッティングにより、**「ガレ場ではよく動き、下りでは踏ん張り、フロントアップは軽い」**という理想の相棒になった。
サスペンションは魔法ではない。物理だ。 理屈を知り、手を動かせば、あなたのセローも必ず応えてくれる。
🛠️ 次のステップ:走りを劇的に変える?
足回りのリフレッシュが完了したら、次はエンジンのレスポンスや操作性の向上方法を知りたくないか?私がDIYで培ったセロー250専用のチューニング・ノウハウを、ロードマップ形式で網羅しました。
👇初心者からベテランまで!セロー250を最強の相棒にするDIYガイドはこちら

💰 浮いたお金で、次はリアサスを。
カスタムが進めば、走るステージも変わる。 40代以上のライダーなら、バイク保険を見直すだけで年間数万円が浮くこともザラだ。 そのお金で、次は夢のオーリンズか、テクニクスのリアサスか……。想像するだけで楽しくなるはずだ。




