はじめに
スイングアームピボットをニードルベアリング化したことで、リヤサスペンションの追従性が劇的に向上した私のセロー250。 今回は、今後のメンテナンス性をさらに上げるため、**「スイングアームへのグリスニップル取り付け」**を行いました。
ネット上では定番のカスタムですが、実際にやってみてふと思いました。 「これ、本当に必要な作業なのだろうか?」
この記事では、取り付け手順の解説はもちろん、2年間・3200km走行後の分解点検結果も踏まえ、**「このカスタムが本当に必要な人、不要な人」**について正直にレビューします。
使用車両: YAMAHA SEROW250(2017年式 DG17J)
結論:グリスニップル化は本当に必要か?
まず作業に入る前に、私の結論をお伝えします。 ニードルベアリング化して2年経過(走行3200km)した状態で分解確認しましたが、グリス切れや腐食は一切ありませんでした。
この結果を踏まえると、一般的な使用環境であれば**「必須ではない」**と言えます。

▼ スイングアームへグリスニップルが必須ではない理由
- 内部の空間: ピボットシャフトのカラーとスイングアームの間には元々隙間があり、ニップル追加でここがグリス溜まりになると、逆に抵抗になる可能性がある。
- 完全な入れ替えは不可: ニップルから注油しても古いグリスを完全に押し出すのは難しく、結局2~3年おきの分解メンテは必要。
- 実証結果: 2~3年ごとの分解給脂で十分コンディションを維持できる。

リレーアームへのグリスニップル取り付けを見送った「3つの妥当な理由」
スイングアームへの加工に合わせて「リレーアーム(リンクユニット)の摺動部3箇所」へのニップル設置も検討しましたが、最終的に取り付けない判断をしました。その理由は以下の通りです。
1. ベアリングを損傷させるリスク(車体接続部)
車体との接続箇所には、あらかじめニードルベアリングが打ち込まれています。ニップル用の穴を開けるには、硬いベアリングのアウターケース(外輪)まで貫通させる必要があり、ベアリング自体の強度低下や破損を招くリスクが非常に高いため、加工は控えるべきと判断しました。
2. 走行中の「物理的な破損」を避けるため(残り2箇所)
リレーアームは車体下部の非常に低い位置にあります。突起物であるグリスニップルを取り付けてしまうと、オフロード走行中に岩や丸太にヒットして折れてしまう可能性があります。山遊びを楽しむセローにとって、これは致命的なトラブルに繋がりかねません。
3. 加工の精度と現状のコンディション
- バリ取りの難しさ: 構造上、穴あけ後の「内部のバリ取り」が困難です。もし金属屑が内部に残れば、ベアリングを傷める原因になります。
- 2年後の実証結果: 実際に分解したところ、2年経ってもグリスの状態は良好でした。
【結論】 リレーアームに関しては、ニップル化による「破損や加工ミス」のリスクが、メンテナンスの手間を省くメリットを上回ると判断しました。ここは**「定期的な分解清掃」**で管理するのがベストな選択と言えます。
▼ それでもスイングアームへはグリスニップルカスタムをおすすめしたい人
しかし、以下のような方には非常に有効なカスタムです。
- 川渡りなど、スイングアームまで水に浸かる走行を頻繁にする方(水抜き・防錆効果)
- 絶対に内部カラー(スペーサー)を腐食させたくない方
- 分解整備の期間を少しでも延ばしたい方
Note: まだ「スイングアームピボットのニードルベアリング化」をしていない方は、ニップル取り付けよりも先にそちらを強くおすすめします。動きの激変ぶりは感動モノです! 👇
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準備するもの:材料と工具
今回の作業は、スイングアームピボット部とリレーアーム接続部の2箇所に行います。

1. グリスニップル
注油のしやすさを考慮し、真っ直ぐなタイプではなく角度付きのものを選びました。 ホームセンターではM6サイズが見当たらなかったため、気密性が高く緩みにくい**テーパーネジ(PT1/8)**を使用します。
- ピボット側: 90度タイプ(エーゼット GB707推奨)
- リレーアーム側: 67度タイプ(エーゼット GB705推奨)
メモ:90度タイプは注油時干渉の可能性があります。- 注意:JIS規格品(GB701など)はネジ部が長く、内部でカラーに干渉するため加工が必要です。JIS表記のないGB705の方がネジ部が短く、加工の手間が省ける可能性があります。
JIS表記有りとJIS表記無し
ネジ部の形状はパッケージ表記の通りでJISありなしで変わることはありません。
グリスニップルの形状と寸法はJIS規格で決められています。JIS表記のないグリースニップルはJIS規格に則ったものではなくメーカー自社規格によって製造されたグリースニップルです。
2. 工具類
- タップ: PT1/8(パイプテーパーネジ)用 ピッチ28
- ドリル: 下穴用3mm、本穴用8mm
- グラインダー: ニップルが長すぎて干渉する場合の切削用
- ハンドグリスガン
1/8管用ネジタップは3種類あるようです
- PS:並行ネジ、部材と部材の結合用。
- PF:並行ネジ、PSより少し細い。水漏れ、ガス漏れ厳禁カ所に使用する。
【作業手順】グリスニップルの取り付け
スイングアームの取り外し手順については、過去記事をご参照ください。ここでは加工手順に絞って解説します。 ➜ (内部リンク:リア周り分解・メンテナンス手順へ)
手順1:穴あけ加工
スイングアームのピボット部とリレーアーム接続部の2箇所に穴を開けます。
- 3mmのドリルで下穴を開ける。
- 8mmのドリルで穴を拡張する。

手順2:タップ切り
開けた穴にネジ山を作ります。
- 使用タップ: PT1/8 ピッチ28
- 慎重に垂直にタップを立ててねじ込んでいきます。
- テーパーネジなのでグリスニップルをねじ込み、グリスガンが差しやすい向き(角度)で止まるか確認しながらタップの深さを調整します。

メモ:ネジ山径実測値
- 「TONEX PT1/8ピッチ28タップ」:9.2~10mm
- 「エーゼット 1/8PTグリースニップル」:9.3~9.6mm


手順3:仮組みとクリアランス確認(重要!)
ここが最重要ポイントです。
- グリスニップルをねじ込み、グリスガンが差しやすい向き(角度)で止まるか確認します。
- 内部への突き出し確認: ニップルのネジ部が内側に突き出しすぎて、内部のカラー(スペーサー)に接触していないか確認します。

手順4:ニップルの長さ調整
私のケースでは、リレーアーム側に使用したJIS規格ニップル(GB701)が長く、内部で干渉しました。
- 対策: グラインダーでニップルのネジ部を削り、短く加工しました。
- これから買う方は、ネジ部の短い「JIS規格外品」を探すとこの手間が省けるかもしれません。

手順5:本締めとシーリング
位置と長さが決まったら本締めします。 気密性を高めるためにシールテープの使用が基本ですが、今回は手元になかったため実験的にエアコン用「ナイログ」を使用しました。(※本来の用途ではないため非推奨です。シールテープを使いましょう)


組み付けとグリスアップ
手順6:車体への組み付け
加工が終わったスイングアームを車体に戻します。
リンク周り、ホイール、チェーンなどを規定トルクで組み上げます。






手順7:グリスの注入
いよいよ新しいニップルからグリスを注入します。
使用するグリスによって乗り味が変わります。
サービスマニュアルでは二硫化モリブデングリスが指定されていますが、私が実際に試したおすすめグリス2選をご紹介します。

ピボットシャフトグリスニップル

リレーアーム接続部のスイングアームグリースニップル

■ こだわりグリス対決:「軽さ」vs「耐久性」
| 特徴 | FUCHS SILCOLENE PRO RG2 | WAKO’S ハイマルチグリース |
| 通称 | シルコリン(赤) | ウレア / 梅ジャム(赤) |
| 重視性能 | 動きの軽さ・防水性 | 耐久性・耐熱性 |
| おすすめ | 林道・コース走行でサスを良く動かしたい方 | 重積載ツーリング・メンテ頻度を下げたい方 |
| 使用感 | 驚くほど抵抗が少なく、足回りが軽くなる! | 熱ダレに強く、長期間性能を維持する鉄板。 |
私は今回、動きの良さを求めて「フックス シルコリン PRO RG2」を使用しました。
FUCHS SILCOLENE|PRO RG2 レーシンググリスを詰める小さいハンドグリスガン。
まとめ
スイングアームへのグリスニップル取り付けは、万人におすすめできる必須カスタムではありません。通常使用であれば、定期的な分解整備で十分です。
しかし、**「過酷な状況(水没など)で走る」「絶対に錆びさせたくない」**というオフロードライダーにとっては、心強い保険となるカスタムです。
ご自身の走行スタイルに合わせて、導入を検討してみてはいかがでしょうか? まずは「スイングアームピボットのベアリング化」から始めて、サスペンション性能の違いを体感してみてください!

🛠️ 次のステップ:走りを劇的に変えてみませんか?
足回りのリフレッシュが完了したら、次はエンジンのレスポンスや操作性の向上に挑戦してみましょう。私がDIYで培ったセロー250専用のチューニング・ノウハウを、ロードマップ形式で網羅しました。
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